生前、作家の百瀬博教さんが真面目に語った「日本」についての噺 (下)

★…世界の中で、アメリカに次いで戦争に強い国ってどこだか知ってるか?日本なんだよ。笑っちまうだろ。こんなにナメられてばかりいる国なんだからさ。
 日本の国防費をドルに換算するとドイツ、イギリス、フランスのそれより多いからなんだ。金があればいざ戦争という時に、どこからでも兵器をドッサリと買える…。それだけで中国を含めた東南アジア諸国が怖がっているわけさ。
 しかし円のレイトが下がれば下がるほど、フランスやドイツの国防費に抜かれて、すぐに世界で3位にでも4位にでもなっちゃう。
 しかも、考えてみればおかしな話だよ。いくら武器を買い集めても最後は使う人間のヤル気の問題なんだから…。少し前だったら、ソ連の軍隊の力は底知れないと世界中が信じていたけれど、今は総ての兵器の部品が揃わなかったりして、メンテナンスも目茶苦茶らしい。これじゃ、数えきれないほど戦車を持っていたって動かなければ、ただの鉄の固まりだよ。
 作戦も立てられない。首脳部なんか今では、第二次世界大戦を振り返って、どうして小さな島の1つでも奪っておかなかったんだろうってホゾかんでいるらしい。万が一、北海道なんかを取っちゃっていたら今頃、モスクワにいくつも蔵を立ててウハウハしていたに違いないんだから…。お金儲けの点では日本人は優秀過ぎるほど優秀だからね。
 でも、今の日本だって笑っていられないよ。敵が攻めてきたら3秒で手を上げちゃう。だって50年間一度として戦ったことのない軍隊と、どっちらけの国民しかいないんだから。
 だけど、自分の親や子供、恋人がやられたら一致団結するだけの精神を日本人が失っているとは思いたくないね。…でも、それだって日本の3分の2ぐらいを外国に取られてから気づいたって遅いんだよ。だいたい六本木、新大久保あたりは日本じゃなくなっているしね。オチオチしていられませんよ。
 ハンバーガーやコカコーラでハラを膨らませている日本の若者は、近いうちに日本はアメリカの1つの州になるだろうって思って、今からアメリカ人になる練習でもしているんだろうか。でも、アメリカは日本を州なんかには絶対にしないよ。万が一、日本人全体にアメリカの市民権なんかを持たせたら、白人の地位を揺るがせ、すぐに・元日本人・の大統領なんかが誕生しかねない。
 しかも、首都がワシントンでは日本から遠いからって、中間をとって「(ハワイの)ホノルルにしろ!」なんていうことになるかもしれない。もちろん極端な例え話かもしれないけど、そのことを一番分かっているのがアメリカの政府だから、アメリカは永遠に日本との距離を保っていくだろう。さっきも言ったけど、日本の国民は、それくらい優秀だってことだよ。
 しかも、日本ほどアメリカに忠実で尽くしている国は、世界のどこを探してもないはずさ。アメリカのGNPの7割は日本。日本にいるアメリカの兵隊1人あたりで割ると、年間1200万円ぐらい払っていることになる。用心棒代はきちんと取られているっていうわけさ。
 それに日本はアメリカに1200兆円ぐらい貸しているんじゃないの? もし、その金を返せなんてほざいた日には海上封鎖されて、米も肉も石油も手に入らなくなって、秀吉の水攻めに合った城みたいに国民全員が空腹でフラフラにさせられちゃうだろうね。
 もう、金は返ってこないってこと。所得が高い割に日本人が貧しいのは、こういったところにもある。そうそう、来年「東條英機」の映画が出来るんだって? いいね。でもさ、東條役が津川雅彦だっていうのが、どうにも許せない。芸は確かにあるが、東條のイメージじゃない。彼が石原裕次郎の弟役をやった「狂った果実」からオレは見ているけど、この役ばかりはミスキャスト。やっぱり東條役は役所広司ですよ。
 死と向かい合った時の東條英機の精神は学ぶべきものが多い。それなのに、その東條役が津川っていうんじゃ、日本の復活はまだまだ先の話になっちまうね。