東儀秀樹「尊い記憶 遥かなる平泉」を引っ提げ『世界文化遺産』登録の平泉・遺跡群で最初の“奉納演奏会”

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雅楽師・東儀秀樹が、世界文化遺産に登録された岩手・平泉町の中尊寺【写真】や毛越寺(もうつうじ)など3ヵ所で2日、同登録後初の”奉納演奏会”を行った。今回の登録を心待ちにしていた東儀は平泉に心を寄せた「尊い記憶 遥かなる平泉〜世界遺産へ」を書き下していた。今回、その思いが叶って登録されたことから“楽曲奉納”となった。
 登録されてから数日、雰囲気的には「平泉」が登録されたような雰囲気になっていて、新幹線で一ノ関を降りると「世界遺産・平泉」なんて書かれた幕があちらこちらに…。こりゃ、まるで「平泉」が登録された感じで勘違いしちゃう!! もっとも、これは前日、食事している際に東儀が言い出したことで、気づいたことだったが…。
要は、今回の「世界文化遺産」に登録されたのは東北地方で栄えた奥州藤原氏ゆかりの土地・平泉にある「中尊寺」を始め「毛越寺」「金鶏山」「無量光院跡」「観自在王院跡」の5遺産。当初は平泉町以外の奥州市や一関市の遺跡も含め国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会に推薦したものの08年の審議で「落選」した。このため今回は「浄土思想の表現」に強く関連する遺産に絞って再チャレンジしていた。もっとも、今回の登録では、当初、政府が推していた奥州藤原氏の住居の「柳之御所遺跡」に関しては「浄土思想との関連が薄い」といった理由から除外されたという。
まあ、登録された遺跡が全て平泉町に点在していることから、どうしても「平泉、平泉」となってしまう。因みに、登録の正式名称は「平泉――仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群」と言うらしい。
 いずれにしても、08年に期待されながらも「落選」していただけに「今回こそは…」という前回以上の思いがあったことは確かだろう。それは東儀も同じだったようで、自ら平泉に心を寄せた「尊い記憶 遥かなる平泉〜世界遺産へ」を書き下ろした。 
 言うまでもなく東儀は、日本を代表する雅楽奏者。日本レコード協会が主催する「日本ゴールドディスク大賞」では8回も受賞している。他にも「日本レコード大賞」では”企画賞”や04年には「芸術選奨文部科学大臣新人賞」なども受賞した。
また、現在「公益社団法人・日本ユネスコ協会連盟」のスペシャル・アドバイザーとNPO法人世界遺産コンサート音楽プロデューサーなどを務めている。

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ところで「尊い記憶 遥かなる平泉〜世界遺産へ」が完成し、レコーディングを行っていた真っ只中に東日本大震災と大津波が発生、岩手県をはじめとする東北地方は甚大な被害を受けただけに、同曲に対する東儀の思いはこれまでにないものがあるようだ。そんなことから今回の”奉納”演奏会を前にした6月27、28日には宮城県の東松島と石巻で慰問ライブも行ってきた。「震災で傷ついた方々の心を少しでも癒すことが出来たら…」という。
 しかも…というべきだろうか、東儀は、この「尊い記憶 遥かなる平泉〜世界遺産へ」を登録直前の6月15日に発売したアルバム「子供たちに優しい未来を」にも収録したというから、これまた発売日は絶好のタイミングだった。

holiday-P1030751.jpgそんなわけで今回、世界文化遺産の登録を受け、最初の週末となった2日、そのメーン・イベントとして企画されたのが”楽曲奉納”の演奏会となった。とにかく、中尊寺本堂から毛越寺本堂、そして同常行堂と、暑い中を3ヵ所もまわって奉納演奏会を行った。
因みに、演奏家では「尊い記憶 遥かなる平泉〜世界遺産へ」の他に「Boy’s Heart」や平原綾香の代表曲でもある「ジュピター」などを披露した。
 ところで、この「尊い記憶 遥かなる平泉〜世界遺産へ」だが、東儀によれば以前、NHKのスペシャル番組で平泉地区の遺跡を旅をした時に味わった思いを作品にしたという。それだけに世界文化遺産への登録には大喜びだったわけで「登録のニュースは震災で大きな被害を受けられた東北地方の早期復旧、復興に対しても大きな起爆剤になると思う。もちろん、自分自身としてもアルバムが今回の登録に間に合ってよかったと思っている。やはり、音楽の持つ力とは優しさ。私は世の中で一番強いのは優しさだと思っているので、その優しさを音で伝えられて行ければ…」と言っていた。

※【写真】は「中尊寺」本堂での“奉納”演奏会(雅楽の篳篥を演奏する東儀秀樹)